先日、六本木まで映画を観にいった。
Genius Party Beyondという、複数の監督によるオムニバスアニメーションだ。
正直言って、見にいく目的の6,7割くらいは
田中達之氏と森本晃司氏の作品であった。
完全に俺の趣味である。
内容は圧巻だった。
前田真宏監督の「GALA」
中澤一登監督の「MOON DRIVE」
大平晋也監督の「わんわ」
田中達之監督の「陶人キット」
森本晃司監督の「次元爆弾」
と、広告どおりの順番の上映だったが、やはり自分の嗜好もあって、
ラスト二人の衝撃が強すぎて前半三人が霞んでしまった。
田中達之氏の「陶人キット」は、これまで画集などでその一部を見てきた。
また、田中達之氏のよく描く世界観をもった作品である。
(工場のような部屋・街、変なキカイなど)
俺はその世界観が大好きである。
穴が開くほど画集を見つめ、真似して描いてみたりしたものである。
その世界が、今まさに、自分の目の前で、
ある空気感をもって、動いている。
それだけでもう発狂ものである。
田中達之氏本人が美術監督をし、緻密に書き込まれた背景。
陰鬱とした雰囲気。
どこか気だるそうな登場人物。奇妙な機械や生命体。
もう最高である。
終わってしまうのがとても残念に感じる作品だった。
森本晃司氏の「次元爆弾」は、ストーリーが組み立てられて
まとまった展開をもつ「陶人キット」とは異なった傾向の作品だった。
実のところ、見に行くときの一番の目的は「陶人キット」だった。
最近の俺はかなり田中達之氏に引っ張られていた。
その世界観と職人的なイラストに惚れ込んでいた。
対して森本晃司氏には、アーティスト的な印象を受けていた。
絵や世界観を参考にする際、どちらかというとわかりやすい
田中達之氏の方を選択していたのである。
いざ作品を見てみると、俺はこの「次元爆弾」に完全に圧倒されていた。
展開は多くを語るものではない。
しかしその1カット1カットが感覚を揺さぶり、内面に語りかけてくる。
Juno Reactorによる音楽もかっこいい。
菅野よう子さんの声がまた、どこか心をキュッとさせる。
思い出そうとすると、なんだか泣きそうになってしまう。
本当に素晴らしい作品だったと思う。
このGenius Partyは簡単に言うと、トップクリエイターを集め、
好きなことをやってもらおうという作品群である。
人間には、好きなこと、嫌いなこと、どうでもいいこと、いろいろあるが、
殊好きなことというのはその人を形成するに当たって大きな役割を果たすと思う。
好きな音楽、好きな料理、好きな映画、好きな作家、好きなスポーツ…
すべてその人の行動へ繋がる。
では「あなたの好きなことをやってください」と言われたときどうなるか。
それらの行動で得られたものが、反芻咀嚼され、アウトプットされるのだと思う。
そうして出力された作品を見ることによって、
その作り手の人間というものが見えてくる気がする。
俺は今回、この「陶人キット」と「次元爆弾」という二作品を見て、
作品のかっこよさを感じたのは勿論であるが、それと同じくらい
田中達之と森本晃司という人間が
「サイコーにカッコイイ!!」と思ってしまったのだ。
森本晃司氏とは、以前あるアニメ関係のイベントでお会いしたことがある。
と言っても、サインを貰って、握手をし、トークショーをみただけだ。
話す機会もあったにはあったのかもしれないが、
恐れ多くてとても雑談なんかできなかった。
「次元爆弾」のような作品を見て、
改めてあの握手の価値の大きさを感じた気がした。
ただ見知らぬ他人Aとして握手をしただけで、
森本晃司と繋がったような気がするから単純なものだ。
作品を見ることによって、感じ、繋がる。
アニメーションという業界でもって、繋がる。
追いつけないまでも追いかけるくらいの挑戦は許されたい。