殺したり殺されたり、追いかけられたりする夢は殆ど無いが、それでも悪い夢というものはあるもので、今回はそういう夢を紹介しようと思う。
●悪夢その1.殺されそうなムード
父に車で山林の村に連れて行かれる。
民家はあるが、殆ど人通りのない山間の村。
ずっと父は暗い顔をしている。
だんだんと僕は、「ひょっとしてここで殺されるのでは?」という気がしてくる。いつも来たことのないひとけのない場所、父のずっと思いつめているような表情。「あ・・・、殺される、かも」と何となく思って焦り始める。
僕は会話でそれとなく探りを入れてみる。
なるべく父の機嫌をとるような言葉を選ぶ。
結局のところ、父は僕を殺さなかった。最初から殺さない気だったのか、気が変わったのかは知らないが、本当に殺す気ならばもっともっと人のいない山奥にいくような気もするし、これから向かおうとしていたのかも、という気もする。
再び車に乗って、田舎の小さなよろずやのような店に降ろされる。父はもう少しこの辺りを見てくる、と言い残して行ってしまった。ここは母親と若い時に過ごした思い出の場所らしい。
父から解放されて少しほっとしながら店を見ていると、パンやケーキなどを作って売っているようでもあり、ゲームの筐体などもあり、この近所の子供の憩いの場所のようであった。
見たことのないレトロなゲームが今もデモ画面を繰り返し、静かに息づいている。
(こんな風に、家庭用のゲーム機に移植もされずに、ひっそりと街に埋もれていくゲームもあるんだろうな)と考える。
店の老婆と話す。
「どんな人が来るんですか」
「そうだねえ、普段はこのあたりの子供だけど、変わった人ではインドの娘っ子が『ナンを作ってほしい』と来たことがあったねぇ。あの時は困った」
というエピソードを聞いた。ムチャしやがる。
その店で、手作りのカスタードメロンパンを食べた。
中のクリームがとろけるようで、今まで食べたどんな物よりも甘い。
途中から自分の都合のいい夢になっているのがポイント。
●悪夢その2.父親の脳卒中
家族揃って食事をしていると。
父の様子がおかしい。頭を抱えて動かない。
見てみると、苦しそうな顔で、額から上が真っ赤になっている。
顔の半分が真っ赤になった人なんて見たことがない。只事ではない、脳出血か梗塞かもしれないと思って急いで救急車を呼ぶ。咄嗟のことに、えーと、110じゃなくて、119だ、などと言いながら携帯で緊急電話をかけると、女性のオペレーターに繋がる。住所を言うのがもどかしい。住所ってこんなに言えないものだったっけ、などと思う。
オペレーターから隊員に代わって、病状を説明する時に、父が狂った。
笑いながら暴れてわけの分からないことを口走っている。もうダメかもしれない。
すると、隊員が「オマエ、嘘ついてるだろう」と怒りはじめた。「そんなことないです」と取り成すものの、「最近多いんだよ、こんなイタズラ。お前たちもこうやって遊んで笑い転げてるんだろう」と隊員の怒りは止まらない。本当なんです。
結局、隊員は電話を切ってしまう。
望みは絶たれた。
僕は焦ったが、まだ急いで車で向かえば何とかなるかもしれない。母に車を出してくれるように頼む。すると、信じられないことに母が何だか乗り気じゃなさそうな顔をしている。強く反対はしないものの、「あなたの気持ちもわかるけど・・・、どうしてそんなオオゴトにするの?」と言った表情をしている。理由は分からない。母は父のことを快く思ってないのか? それとも単純にこの事態が呑み込めていないだけなのか? どんどん絶望感が高まる。一生懸命やっても、何もかも悪い方悪い方にいくあの悪夢感。今思えば、あの時の母親は現実の母親じゃなかった。鈴木京香みたいな顔をしてた。どういう示唆があるのかは分からないが、とにかく夢の中では僕は鈴木京香を母親だと思っている。
鈴木京香は結局、「この子ったら、仕方ないわね」みたいな微笑みで車だけ貸してくれた。「お姉ちゃんと一緒に行っておいで。あ、帰りになにか美味しいもの買ってきてね♪」と言われ(信じられねー・・・)と内心思いつつも、急いで出発する。まだ間に合うかもしれない。父を助けられるのは、今のところ僕しか居ない。
運転して辿り着いたのは、温水プールのアトラクション施設だった。
そこで目が覚めて、笑った。プールに行ってどうする。
夢の中での僕は、(泳ぎ終わった頃にまだ父の具合が悪かったら、病院に行かないと・・・)と思ってた。いいから病院にいけ、病院に。
悪夢は悪夢なんだけど、後々考えるとおもしろい、というお話。